脱・レッドオーシャン

保険会社に勤めている著者が、保険業界の可能性についての考えを綴ります。

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』を読んで

久しぶりの投稿が大晦日となってしまいました。

 

前回の投稿の最後に、次回はsdgsについて書きますと宣言しましたが、やはりそれはまたの機会に。ということで、タイトルに挙げた山口周さんの著書を読んでの感想を書きます。

 

<要旨>

内容としては、ビジネスで勝つには論理的思考よりも感性が重要視される時代であるために美意識を鍛える必要があるということが述べられています。そして、そのような時代となっている背景として、次の3つが挙げられています。

1.理論的・分析的手法(すなわち、「サイエンス」)を重視したビジネス課題の解決に限界が生じてきている
→「サイエンス」とは再現可能なものであり、その手法を多くの人が身に着けたことに  よって「サイエンス」のコモディティ化が進んでいる。すなわち差別化ができない。一方で、VUCAな現状を解決するにはサイエンスだけでは不十分
2.世界中の市場が自己実現的消費の高まりを見せている
→人の承認欲求や自己実現欲求を叶えるためには、論理よりも感性を磨く必要あり
3.システムの変化に法整備が追い付いていない
→すなわち法整備がなされない分野について判断が迫られるが、正しい判断をするた めには自然法の考え方や美意識が重要となる

 

<感想>

・法務に所属していた私としては、自然法の考え方については納得させられるものがありました。私の仕事の内容は、基本的には既存の法令をもとに事案を裁いていくことが多かったですが、根拠となる法令がなくビジネス的な判断が必要な場面も数多くありました。その時に判断のよりどころとなる価値・判断基準を持つことで的確な判断を下すことができる、ということになるのでしょう。

・経営企画部門で美意識のコンセプトを考え、それを法務やコンプライアンス部門に反映、浸透させていくのはそこまで困難ではないと思う一方、商品開発に落とし込むのはそう簡単ではないと考えています。論理的思考は、ある程度の知的水準を満たせば容易に習得可能であるため、習得できても「コモディティ」となってしまいます。一方、美意識の内容は個社・個人によって異なるため「コモディティ」とはなりませんが、こうすれば確実に醸成可能、という方法はありません。だから、アートの力を高めたコンサルタント(広告代理店?デザイナー?)に活躍の余地が出てくるのかもしれません。

・アートの力が花開いた例としてマツダが紹介されていましたが、無形の商品で顧客の自己実現欲求を高めるというのはかなり難しそうです。

 

というわけで、また来年。